ゲームは、愛と情熱と【VA-11 Hall-A】
【飲み物とおつまみを用意して、リラックスした状態でお読みください。】
西暦207X年、グリッチシティ。
ここは、存在すべきでない街。企業と犯罪帝国が牛耳る、タックスヘイヴン。
全市民に監視用のナノマシンが注入され、腐敗した政府の法を守らせるべく、ホワイトナイトたちが目を光らせている。
あらゆる形の暴力が蔓延し、無力な人々の日常は急速におびやかされつつある。
打ちのめされ、仕事や家族、勉学のことだけを考えようとする者。
街から逃げ出そうとする者…あきらめて受け入れる者。
そんな彼らにとって、答えはグラスの底に沈んでいる。
大通りから少し入った狭い路地に…
スラム街のそばに、それはある。
BTC認定バー番号VA-11ホールA…
…私たちは、”ヴァルハラ”と呼んでいる
コンクリート砂漠の小さなオアシス。疲弊した人々を待つ魂たちの泉。
物語は、ここから始まる。
(本作品の冒頭より引用)
おはようございます、てふたろうです。
今回はスケバンゲームスによるサイバーパンクバーテンダーアクションゲーム、『VA-11 Hall-A:Cyberpunk Bartender Action』をレビューしていきます。
実はこのゲーム、僕のお気に入りのゲームのひとつでsteamアカウントのアイコンにもなっている作品です。
本当に素晴らしいゲームなのでぜひ最後までお付き合いください。
▼美しいドットで描かれたタイトル画面
1.どういったゲームなのか?
VA-11 Hall-Aは、ディストピアのとある小さなバー「VA-11 Hall-A」を中心として描かれるビジュアルノベルゲームです。(VA-11 Hall-Aはヴァルハラと読む)
提供するカクテルに応じて物語が変化していく仕様の独特なノベルゲームとなっています。PC-98風に作られており、おっさん世代にはグッとくるグラフィックも特徴の一つです。
▼注文されたビールをLサイズにアレンジして提供した時の反応
カクテルは、「サンシャインクラウド」や「ピアノマン」と直接頼まれることもあれば、「僕の瞳に似合うカクテルを」などとバーテンダーとしてのセンスが問われることもあります。
逆に注文を無視することで、聞き出せなかった話を聞くことができたり物語が分岐したりと少し複雑なゲーム性も秘めている作品です。
また、ゲームシステムは「酒を片手にリラックスして出来る」ことを考えて作られていて、基本的にはカクテルを作り、バーを訪ねる人々と話をするだけとシンプルな作りになっています。
▼ゲーム冒頭に現れる注意書き、遊び心に思わずニヤけてしまう。
記事冒頭の「飲み物とおつまみを用意して、リラックスした状態でお読みください。」というのは実際にゲーム冒頭の注意書きとして書かれていて、遊び心とこだわりを感じます。
メタ的なUIも少なく、スマホの画面やドリンクのメニューといったUIが用いられ物語に入り込みやすく雰囲気を壊さない配慮もされています。
次にこのゲームの根幹となるストーリーと深い設定について紹介していきます。
2.架空なのに現実のように感じられる物語
VA-11 Hall-Aは近未来の世界で権力に支配された街、グリッチシティを舞台とする物語で、主人公のジルの視点で描かれています。
ジル
本作主人公。昔の恋人との出来事の傷を今なお癒せぬまま暮らす”VA-11 Hall-A”バーテンダー。オーナーのデイナに恋心を抱いている。
(公式サイトより:http://publishing.playism.jp/va11halla)
ジルはあくまでもバーに勤めるバーテンダーであり、悪の組織と戦ったり、ディストピアを救ったりはしません。
ただ悩める人々の話を聞き、カクテルを提供し彼らの日常をカクテルによって彩る物語です。部外者という立場から彼らにカクテルと提供する。まさにバーテンダーそのものです。
VA-11 Hall-Aの架空な世界に描かれる奇妙な現実感は、
社会風刺の効いた深く細かな設定、
近く現実でも問題とされるであろう人々の悩み、
そして日本を中心とするネット文化の登場などによって作られていて
まるで世界のどこかにグリッチシティがあるかのような錯覚を覚えます。
そして悩める彼らは安息を求めてVA-11 Hall-Aにやってくるのです。
また、酒の場ならではのアダルティな雰囲気も魅力の一つです。皮肉たっぷりな会話、さらにR18並の会話があったり、飲むことで悩みを打ち明けたりという成人社会人が強く共感できる部分が多くあります。
▼プレイしているこちらも恥ずかしくなってしまうような文面
酒を飲まずにはいられないそんな彼らの毎日。僕らと同じですね、まったく
個性豊かな彼らの人間模様、 コンパクトで手頃なボリュームに深く現実的な物語を自分の手で感じてみてはいかがでしょうか
3.レビュー総評
以上に加えて様々な点から評価していきます。
・構成要素…4点
PC98風に作られた美しいドットやBGMは文句なしの高得点だが、ボリュームに難があるというのは隠し切れない事実である。深く哲学的な側面の強く手頃であるのが良いという一方、手頃さが中途半端と感じてしまう側面もあるということで4点。
上では紹介しなかったがBGMは本当に良いので参考までに一曲。 garoad.bandcamp.com
・魅力…5点
魅力あふれるキャラクター達に乾杯。サイバーパンクや近未来という統一された雰囲気をはじめ、細かく作られた設定は素晴らしいものだと思う。日本語翻訳にも力を入れていてゲームへの愛と拘りを感じたので5点。
・プレイアビリティ…3点
ビジュアルノベル、アドベンチャーゲームの背負った宿命ともいえるゲーム性の薄さで減点。宿命というのはナンセンスであるのは解るが、あらゆるジャンルを平等に見た場合仕方がない。
一方で、バーデンダーアクションのシステムやプレイヤーのセンスに訴えかける選択はゲーム性の高いものである。飽きさせない工夫もさることながらオリジナリティも素晴らしいということで3点。
・意図的介入…3点
ストーリーのボリューム上仕方がないが、自由度はあまり高くはない。
プレイヤーのセンスに訴えかける選択は上の通り評価できるが、その選択肢があまりに膨大であると感じさせてしまう点もあるためこれは2点。
・外的要素...4点
現代世界の延長を感じさせるネタや、ブラジル北部に位置する国のベネズエラ人2名によるゲーム作品という点でゲーム作りへの情熱に敬意をこめて4点。別ゲーム作品であるMidBossの2064とのつながりに関しては僕がプレイできていないので割愛、申し訳ない。
総合得点…3.8点/5点
これは全てのジャンルのゲームプレイヤーという視点から僕が評価した得点です。ビジュアルノベルやアドベンチャーゲームが好きな方にはぜひプレイしてもらいたい作品です。
ビジュアルノベルユーザー向けに評価したらオール5点ですからね!
単調なゲーム性で人を選ぶのはわかるけど、アドベンチャーゲームもっと普及して欲しいなあって思ってます。
4.あとがき
企業のため、売り上げのため、炎上しないように、というゲームの作り方は僕はあまり好きじゃないです。
僕はまだユーザーという視点でしか物事を語れない立場だけれど…
そういうのもあってこの、ベネズエラ出身の2人組によるVA-11 Hall-Aが本当に大好きで、うまく説明できないけれど素敵だなって思う
大手企業のゲームがダメというわけじゃないけど、製作者との距離をユーザーが少しでも遠く感じてしまったら、製作者が愛をこめて作ったゲームも一人走りしちゃう気がするんよね。製作者の一人走りもあるけども
その点インディーズゲームは足並みそろえて頑張ってる感じがするから好き。だからみんなもインディーズゲームやっていこうな、
次回紹介作品は未定です。
リアルが少し忙しいので雑談投稿が多くなるかも、その時はどうかお付き合いください。
Hearthstone新拡張の紹介でも挟もうかな…